リサーチは何をしているのか?
前々回のコラムにて想いについてお伝えしました。
想いはvisionを創る際の起点となり、プロジェクトの進める燃料として大切な役割を持ちます。
リサーチもvisionを創る上で大切な役割を担いますので今回はリサーチについて
お話を進めていきたいと思います。
(visionは想いxリサーチ・ワークショップを通して作られていきます。)
リサーチはサーチをreすることです。
これですと何のことか??が点灯してしまうかと思いますので、少し読み解いていきます。
サーチは、探索する、調査するという意味を持ちます。
まだ理解していないことに対して、理解するための道具を探しているような状態と言えます。
それをreするのがリサーチですので、理解していなかったことを体系化しつつ、調べていく事がリサーチになります。
リサーチをする上で、初めてのことはサーチから始める必要がもちろんありますので
リサーチの種類として大きく分けると、体系化出来ていないことに対する調査と、
体系化出来ていることに対する調査があります。
言い換えると、定量的なリサーチと定性的なリサーチとなります。
きんつぎは、地域の持続する仕組みを創ることを考えておりますので、地域におけるリサーチを行います。
地域のリサーチでは、地形のように数万年という長い年月をかけてその地域が育んできたことから、
今起きている現象までを対象としています。具体的には下記の図の事をまとめていきます。
●定量的なリサーチ
定量的なリサーチを行うときに役立つものとして、二つの有効なツールがあります。
まずはGoogle。地形の全体を見るにしても地域の情報を集めるにしても簡単に集まります。
ただGoogleマップはもう公共の財産と言っても良いかもしれませんが
他の情報は情報の真偽について考えなければなりません。
情報の真偽を確かめる有効な道具として、各市町村が出している小学生向けの地域をまとめた本があります。
この本が二つ目のツールです。
リサーチを行う際、まずはその本を図書館で探し、連絡先を調べて譲ってもらうと、
その地域の主要な情報が入ってきます。
定量的なデータを扱う際、該当地域のデータを単独で見ていてもどこに特徴があるのかが見えてきません。
定量的なデータは相対的に見る必要があります。
そのため、気候や人口、駅の乗降者人数など数字として掴めるものは徹底的にストックしていきます。
そのストックから、ある関係性を設定して定量的な数字を相対化して理解していきます。
地域のリサーチをする上で、大枠を掴む際、役立つのが用途地域です。
用途地域は都市計画法と建築基準法により、各地域に設定されています。
普段は用途地域を気にかけることもないかと思いますが、リサーチの初期段階では用途地域に着目します。
用途地域はその地域内で建てることのできる用途を決めていますので、その地域の方向性が自ずと決まってきます。
例えば、第一種低層住居専用地域であればほぼ店舗は
建てる事(コンビニと店舗併用住宅で条件を満たしていれば可能。)が出来ない上に、
10mを越える建物を建築する事が出来ませんので、
人口密度がそれほど高くならずに落ち着いた住宅地が作られているはずです。
このように用途によってある程度、その地域を特性は用途地域によって決まってしまいます。
大きな方向性は用途地域によって決まる可能性が高いのですが、
その法律も出来てから100年も経っていないので、もっと分厚い歴史がその地域には必ずあります。
それは定量的なリサーチからもえる事が出来ますが、
定性的なリサーチの方がその事を感じやすいのではないかと思います。
●定性的なリサーチ
定性的なリサーチは、一言で言えばその地域の雰囲気を知るということです。
そのための手段はなんと言っても、その地域を歩くに尽きます。
数時間の街歩きを何回か繰り返します。最低でも朝昼晩と3回は必要になります。
歩いてみると、データでは分からない事が見えてきます。
例えば、ある地域では道路側に花がたくさん飾られていました。
地域の特産であることも関係しているのかと思いましたが、
その地域は、道幅が狭く、車は何かしらの目的がない限り通りません(通り抜けの道にはならない)。
車があまり通らないので、道路に人が出やすい状態であり、何かあるとご近所さん同士でコミュニケーションがしやすい状況でした。
その“何か”として、たくさんの花が使われていたのではないか?ということが、その地域を歩いていて得たことです。
このようなことは、歩く速度でないとなかなか読み解くことが出来ません。
車で通り過ぎるだけでは読み解けないことなので、
定性的なリサーチの密度を上げる為には、速度と時間が密接に関係してきます。
●定量的なリサーチと定性的なリサーチの関係性
定量的なリサーチと、定性的なリサーチの間には双方向の関係性があり、
両方を行う事により、互いのリサーチの密度がより高まります。
地域のリサーチを始める際、まずは用途地域を調べ、その地域を予想し、仮説を立てます。
その上で人口、気候、交通量など様々な定量的なリサーチを行い、仮説を書き換えます。
書き換えた仮設を踏まえて、定性的リサーチを行い、仮説が正しいのか?それともズレている部分があるのか?
もしズレているとしたら、何が要因なのか?を定量的なリサーチからやり直していきます。
この事を何回か繰り返して、ようやく、その地域の特性が浮かび上がり、リサーチとしての作業を終えます。