空き家の歴史
今回は、日本の住宅事情の変化から、空き家の歴史をたどりたいと思います。
空き家問題という言葉をよく耳にしますが、いつ頃から空き家は増え始めたのでしょうか。
戦後の日本(1945年)では、戦争の影響により、約420万戸の住宅が不足していたと言われています。
しかし、そのころの日本はまず、日々の食料や衣服の確保が優先で、住宅は後回しにせざるを得ない状況でした。
1戸に複数の家族が暮らしたり、小屋のようなものも多く、量も質も欠く状態だったと言えます。
その状況を解消するべく、住宅金融公庫や公営住宅法、日本住宅公団を設立。さらに、住宅建設5カ年計画が制定されました。
これらの住宅政策の効果により、1968年の住宅統計調査では、住宅数が世帯数を上回りましたが、
その後、第1期~第8期まで、政策の目標を変更しながら2005年までの39年間、住宅政策は続けられました。
第1期では「1世帯1住宅」、第2期では「1人1室」とそれぞれの期に目標があり、
住宅の量も質も少しづつ改善されていきましたが、公共による住宅の新規供給の支援を目的とした政策のため、
空き家活用やリノベーションといったストック活用については盛り込れていませんでした。
(当時の建物の質が現在に残せるものかということに疑問はもちろんありますが)
1968年以降は、住宅数と世帯数の差は次第に大きくなり、
空き家数は、1968年に103万戸、1978年に268万戸、1988年に394万戸と増えていきました。
人口減少や住宅ニーズの多様化が進む今日、住宅政策は転換期にあります。
空き家問題の要因のひとつは、大都市に人口が集中することのように感じますが、
テクノロジーの進化により、都市でなければいけない理由は減少しつつあるとすると、
今後のヒントは、地方にあるような気がします。
愛知県瀬戸市や千葉県いすみ市など、きんつぎがかかわる地域の方々のお話を聞くと、
空き家問題の少し先の未来を、予習をしているような感じがします。
利回りやキャッシュフローといった、数字にとらわれすぎないシェアハウスの運営、
(もちろん、経営を持続可能にするために数字を追うことは必要です)
古民家をプロレベルでDIYを行い、さらにはそのままDIYを仕事にしてしまう方など、
みなさん、欲しい暮らしを自分たちでつくっています。
住まいは工業製品を買うように、完成されたものではなく、
長い年月をかけて、編集しながら暮らしていくものだと思います。
住宅の量は、オーバーしてしまうほどにありますので、これからは質の向上を考えていく必要があります。
質の向上において欠かせない視点として、いまある物を利用することと、住まい手同士の繋がりではないでしょうか。
楽しんで、自分たちで暮らしをつくっていくという視点を持つと、
工具などの物の貸し借りを行ったり、互いの作業を手伝うようになるかもしれません。
DIYをしてみることや、地域との関わり合いを作ることで、住まいの選択肢は増え、
豊かな地域が持続する仕組みのひとつになるのではないでしょうか。
※参考文献 住宅建設計画法及び住宅建設五箇年計画の レビュー – 国土交通省
平成 30 年住宅・土地統計調査 住宅数概数集 計 結果の概 要