リサーチは何に役立つのか?
前回はリサーチの中身についてお伝えしましたので、
今回は、
・リサーチはどんな役割を持っているのか?
・何に役立つのか?
という視点でお伝えします。
プロジェクトをスタートする際は、クライアントの想いを起点にして、
リサーチとワークショップを行いながら、ヴィジョンを作り上げていきます。
このようにお伝えしますと、リサーチはヴィジョンを描き出すための、一つの手段のように感じるかもしれません。
そのような側面もありますが、それだけでなく、
プロジェクトが動き出すまでリサーチを更新し続け、プロジェクトを支える役割を持ちます。
イメージをしやすいように物に例えると、下敷きになります。
字を書く際、下敷きがないと紙が破れたり、下の紙に前の紙に書いた字の跡がついたりし、
下敷きがないと次へ進む際に不便な想いをします。
下敷きは、字を上手く書くことが出来る様になるものではありませんが、
下敷きがあることで次のページへと向かうサポートを行っています。
プロジェクトを上手く進める上で、リサーチはこの下敷きのような役割を果たします。
ヴィジョンを作り出すために、リサーチの少し後を追うように、ワークショップを行っていきまが、
(ワークショップについては後日お伝えします)
そのワークショップを行う際、リサーチがないと参加者の想いが際限なく、その場に膨らんでしまう可能性があります。
もちろん、参加者の想いは大切ですが、話が膨らむだけでは、ヴィジョンに落とし込むことは難しく感じます。
膨らんだ話を収束させるために、リサーチで収集したデータなどが役に立ちます。
また、ワークショップを始める前に、どの話をすると良いのかという根源的な問いも、リサーチを行うことで得ることが出来ますし、
リサーチで得た気付きや、情報をワークショップに参加する方へシェアすることで、ワークショップの枠組みを形成することが出来ます。
このように何かを決定づけるまでの役割ではありませんが、サポート役としてリサーチは役に立ちます。
下敷きがある程度の硬さ(密度)が必要なように、プロジェクトを前に進めていく上で、リサーチも密度が必要になります。
密度を上げる方法は前々回お伝えしたように方法論を作り出し、
その方法論をアップデートしていくことや、多くの地域を見渡し相対化していくことがポイントです。
そして、リサーチの密度が高いことでプロジェクト関係者に情報が行き渡り、
プロジェクトが進みやすくなることと方向性のブレを減らす作用があります。
建築の設計を行う際もリサーチは役に立ちます。
きんつぎがつくりだす建築は、突然そこに現れるような形態ではなく
(もちろん地域によってはシンボル性が必要な時もあると考えます)、
昔からそこにあったかのような、地域に馴染んだ建築を目指します。
地域に馴染むようなデザインを行う為にリサーチを行い、地域のデザインコードを読み解いていきます。
これらのように、リサーチは各フェーズにてアイデアの根っこになっていたり、
話題を進める上で話題の方向性を整えるなどサポート的な役割を担っています。
リサーチが無いと、どのフェーズにおいても混乱が生じることになるはずです。
書き進める上で、紙(プロジェクト)をガタガタにしない為に、下敷き(リサーチ)は大事な役割となります。
初期のリサーチでは、統計データを調べたり、街を歩くことなどを行っていますが、
地域や建築を作る上で欠かせない、人の声や想いがリサーチの初期段階では入っていません。
この欠かすことのできない部分を、リサーチの次のフェーズとなるワークショップにて取り入れていきます。
長くなりましたので、ワークショップの話はまた今度お伝えします。