不動産キャッシュフローとは?
以前のコラムで、不動産融資の3つのポイントについてお話ししました。
担保評価、属性に続き、今回は最後のポイントの不動産キャッシュフローについて、
深堀していきたいと思います。
事業用の不動産をお持ちの方や、これから不動産事業をお考えの方は、
一度は不動産キャッシュフローを見たことがあると思います。
ハウスメーカーやゼネコンなどからの提案資料に、図面とともにある細かな数字が並んだ、表のようなものです。
それぞれの会社で、様式は異なりますが、大枠はほぼ同じです。
横軸が時間(年)になっており、縦軸が収支(収入と経費)になっているものが一般的です。
つまり、縦一列を見ると1年間でその不動産がどのように儲かるのか(儲からないのか)がわかるようになっていて、
横軸は40年(列)くらいまでのものが多いように思います。
不動産キャッシュフローをつくり、30年、40年先までお金の流れを読み解くことで、
その計画が成り立っているかを確認でき、不動産事業を行うべきなのかの判断材料になります。
それでは、不動産キャッシュフロー上、儲かっていれば安心かというとそうではありません。
ここで課題となるのが、不動産キャッシュフローはあくまでも想定の数字なので、いかようにでも作れてしまうということです。
不動産キャッシュフロー上に出てくる数字を見ていくと、
収入では、家賃や礼金、更新料などがあります。
支出では、固定資産税や都市計画税などの税金、修繕積立金や火災保険などがあります。
このひとつひとつが、適正に設定されていれば問題ないのですが、
例えば、家賃が周辺の相場より高すぎたり、家賃低減率が考慮されていなかったり、
支出のある項目が抜けていたりすると、実際に事業を始めてから、想定と異なる収支になってしまいます。
思うような手残りが確保できなくなり、最悪の場合は、返済が滞り事業を継続できなくなってしまうこともあるかもしれません。
大切なことは、提案資料のキャッシュフローを鵜吞みににせずに、
それぞれの数字について、簡単にで構いませんので、調べてみることをお勧めします。
家賃でしたら、周辺のおおよその家賃をインターネットなどで簡単に調べられますし、
火災保険でしたら、事前に見積を取ることもできます。
先ほどもお話ししましたが、キャッシュフローはあくまでも想定なので、
完璧なものをつくることはできません。しかし、その想定の精度を高めることはできます。
また、相場と数字が異なるからダメというわけではなく、
例えば、企画や間取り、デザインを工夫して、周辺と差別化を行うことで、より家賃を高くできるかもしれません。
キャッシュフローの数字が、相場と大きく乖離しないか、また、乖離がある場合は、その根拠を確認することも大切です。
すべてを把握することは難しいですが、少し気を使うことで、事業をより堅実なものにできる可能性があります。
金融機関に融資の相談をする場合は、審査の際に不動産キャッシュフローを求めらることがあります。
提出したキャッシュフローも審査の材料のひとつになりますが、
多くの金融機関は、機関内に独自の基準があり(一般的的な相場よりもかなりプレッシャーをかける)、
その基準に合うかを確認して審査を行います。
つまり、見た目だけ良いキャッシュフローを作っても、機関内の基準に当てはまらないと、審査に落ちてしまうこともありますし、
根拠のない相場からかけ離れた数字でキャッシュフローをつくってしまうと、逆に金融機関からの信用を失ってしまう可能性があります。
一言で不動産キャッシュフローといっても奥が深く、複雑ですが、
簡単に調べられることもありますので、アンテナを張って情報を集めて数字を確認しつつ、
信頼のできる専門家とタッグを組んで事業を進めていくと良いと思います。
きんつぎでは、企画やリサーチ、キャッシュフローの作成や金融機関との打合せサポートなども行っております。
不動産事業をお考えの際は、お気軽にご相談ください。